sadaijin_nanigashiの日記

虚無からの投壜通信

日々のあれやこれやをいろいろと。

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こんな写真を上げました

先日、悲しくも呪われた東京五輪の開会式に先立って、ブルーインパルスの展示飛行が行なわれた。飛行ルートの比較的近くに住んでいる私は写真を撮ってFBに上げたのだが、そこには「Aw, great, here comes the thunderous applause.」というキャプションをつけておいた。これはAC5で展示飛行ミッションの際、自分たちの隊の展示飛行と副大統領のアジテーション演説に対して、バートレット(彼はこのミッションで戦死する)が「やだやだ、これで満場の拍手喝采となるんだぜ」と皮肉った台詞の英語版を引用したものだが、写真を見た大半の人はそんなキャプションの意味をおそらくは吟味もせずに「いいね」をつけていた。まあ、英語のキャプションだし、読む人も少なかったのかなとは思う。だが、Googleでこの台詞の検索をかければすぐに出典はわかるので、不明なことをすぐに調べる習慣のある人にとってみればその含意を理解するのはさして難しい話ではない。だが大半の人たちにとってはそうではなかったようだ。

つまりは、そういうことなのだろう。バートレットが嘆きつつ皮肉ったように、そして副大統領のアジテーション演説に対して市民達が反戦歌の大合唱で応えたというゲームでの展開が実現しないように、大衆は結局の所ジャンクフードのようなプロパガンダにコロッと乗せられ、浮かれてしまう程度の生き物なのだと思う。

 

そして、その夜の開会式では、ゲーム音楽のメドレーが使われたようだ。とは言っても比較的許諾の得やすい大手ゲームパブリッシャーから一括許諾を得て間に合わせたような代物だったらしく、法務部門での審査が厳しいので有名な任天堂や、古代祐三のように出版権も個人管理にしている独立系コンポーザーの曲は全く使われていない割には、極右で歴史改竄主義で少なくとも五輪憲章に謳われているような人権の擁護とは真逆の反動的発言ばかりしているクズのすぎやまこういちが作曲したドラクエの曲も使われていたようだ。これって世界的イベントでヴァーグナーの曲を使うくらいヤバいことなんだが、使った側は理解しているのか?

ヴァーグナーは彼自身がガチガチの反ユダヤ主義者だったことや、彼の作品がナチスのイベントで数多く使われたこともあり、今日では世界的なイベントではまず使われない。

だが、私の周りにいるゲーム好きの連中にとっては、そんなことはどうでも良いことだったらしい。サブカルの音楽が国家的イベントに使われたことに浮かれ、もう聴くのすらウンザリするような「感動した」という言葉を臆面もなく叫ぶ始末であった。サブカルがその成り立ちのうちにかつては持っていたはずの、主流なるものに対する明確な対抗心と反抗心は完全にうち捨てられ、「その口から吐き出される全ての言葉には毒がある」とニーチェが喝破した国家の大衆動員の手段に堕したことについても、彼らの殆どはむしろ喜びを以て迎える始末であった。私はそういう連中の文化に対する認識を吐き気を覚えつつ眺めることにしようと思う。

これ以上、もうこれらの人々の水準を期待するのは無理なのだろう。だから、私はもう微笑みつつ涙を流し、嘔吐するということをこれからの人生においても繰り返すしかないのだろう。