sadaijin_nanigashiの日記

虚無からの投壜通信

日々のあれやこれやをいろいろと。

ゼニ欲しさに心を売ることの卑しさよ


Fête du citron® - Menton

マントン市のレモン祭り、ここ数年はようやく日本でも知られるようになり、三井住友VISAカードからタダでもらえるカレンダーの3月の内容もマントンのレモン祭りだった。

で、今年のレモン祭りのテーマは「中国のレモン」だそうで、パンダやら竜やらをあしらった展示が沢山ある模様。イメージキャラクターとして用いられてる謎のレモン親父の意匠が中国のそれなのかベトナムのそれなのかもよく分からないという知的レベルの低さはいつものことなのでまあほっとくとしよう。だが、曖昧な記憶では、中国を取り上げる頻度が高くないか?ということで調べてみたら、2011年に「Menton célèbre les grandes civilisations」の一部として、そして大分昔の1974年には「Citron et Chinois」として中国を取り上げている。各テーマ別に整理してみても、ジュール・ヴェルヌ(ナント生まれであってマントンとは何の関係もない)がちょいちょい取り上げられている他は、中国のこの贔屓のされ方は結構例外的と言っていいだろう。特に2011年から僅か4年で取り上げるというのは明らかに今年の春節の時期とレモン祭りの時期が重なることによる商業的理由と考えるべきで、ここ10年くらいでフランスを訪れる中国の観光客が凄まじく増えたこと(2013年は170万人に達し、日本の70万人を圧倒している)を考えれば、パリにばっかり客を取られるのは癪だから是非ともコート・ダジュールにも……と考えるのは分からなくもない。「中国人にとっての」パリの治安の悪さは彼の国の人たちの間でも有名になるレベルだし。

しかし、こういうある種の「媚び」に私は強い違和感を感じる。自分たちの祭を見てもらいたかったら普段通りの祭をやればいいだけであって、宣伝だけしっかりやればあとはテーマなどを中国シフトする必要はそもそも感じられない。しかも、新疆ウイグル自治区での暴動やチベットでの若手僧侶による抗議の焼身自殺はルモンドなどの比較的左派寄りとされる新聞で相変わらず非常に批判的なトーンで伝えられている。コート・ダジュールの地元紙であるところのニース・マタンは日和見やや右翼の論調の新聞だが、やはり全国で支配的な中国の圧政に対する批判的な世論を蔑ろにしてまでこのように中国に媚びたととられかねない企画を立てるのはいかがなものかと思う。私が今のような政治的態度を維持したまま現地にいる人間だとしたら、ここまでの露骨な企画の展開については、ニースからマントンくんだりまで来ることの面倒くささを考えて、商業的成功の見通しの低さを提起せざるを得ないだろう。