世界よ瞼を閉じて

先日見かけた看板。
遮音性の高いヘッドフォンですよと謳いたいのは分かるのだけれど、「世界をミュートする」って表現はさすがにどうなのかなあと思います。

……と思ったら結構宣伝でも使ってるのですね。

なんでこの表現に違和感を感じたかと言えば、「世界をミュートする」という表現が、世界そのものの拒絶につながる解釈を招くからです。

こちらがどのような態度を取るとしても、実際の所私たちという存在は世界そのものを構成する一要素であり、結果として世界そのものを拒絶することはできません。世界は否応なしに私との関係性を、私たちに先行して構築しているのです。にも関わらず「世界を遮音する」というこの表現は、世界との関係性において自分がイニシアチブを持っているかのような傲慢さを感じさせます。

日常の喧噪から逃れて遮音性の高いノイズキャンセリングヘッドフォンを使う快適さは、私もQuietComfort15を使っているのでよく分かります。ですが、世界を謝絶するべきノイズと断じるようなこういう考え方は、私にはどうしても受け容れられません。