sadaijin_nanigashiの日記

虚無からの投壜通信

日々のあれやこれやをいろいろと。

敗戦処理の思い出

以前に勤めていた会社で、とある敗戦処理プロジェクトのプロマネをしていたことがある。

敗戦処理とはいっても周囲の偉いさん達は誰もこれが沈没プロジェクトは思ってなくて、売れないのは現場の担当者の努力が足りないからだと本気で思ってたらしい。結果、ピークでは1000万円近くの、私が担当する前でも400万円近い赤字を量産する完全な不良案件だった。にもかかわらず、偉いさん達は誰も責任を取らず、そして私がプロマネとなった。

赤字を解消するためには①売上を増やす ②支出を減らす この2つを同時に進めていく必要があるわけだが、そのプロジェクト方面に対する知見のあるスタッフが誰もいない中、そして社風がそのプロジェクトと全く適合していないという勢いを増した向かい風の中((c) たっぽい)、社内でコンタクト先を持ってる人を探しては事前営業を数十社行い、数字に明るい人からはこの商品の持つ構造的欠陥について厳しい突っ込みを受けつつもそれをかわし、セールスデッキも自分で作りながらあちこちを回る日々が続いた。「営業開発」を名乗る無能共の最終処分場(何せ彼らは予算を持っていない!)は自分たちがその分野に関する知見がゼロであるのをごまかすためにわざと強気の敵対的態度を取っていたりという笑うしかない状態の中、それでも数件の売上は上積みすることに成功した。

そして経費の削減については、工程の全プロセスを見直して徹底的な標準化と水平分業の推進によるコスト低廉化、前年からの素材の継続使用による習熟向上とエラー削減も実現し、赤字は最終的に70万円までに圧縮することができ、従来ズルズルであった納期も5週間の短縮化を成功、毎年ほぼ同じタイミングで納品することができるまでになった。

だが、これが限界であった。構造的な欠陥を抱えたこの商品は派生しての展開力が極めて乏しく、小生一人が数十社を回るという状況では人的資源の観点からも無理があり、合理的な範疇ではどう考えてもビジネスとして成功し得ない仕事に半年以上関わらなければいけないこと、そして「営業」を冠しつつも社内政治に奔走するだけで何もしないだけの無能の集団を見ながら仕事をするという苦痛はある日私の精神的限界を超えてしまった。かくして、私はよその会社に移るベと決意したのだった。

そして先日、このプロジェクトの2017版納品物が6/16に公開されるらしいと聞いて、昨日同社のWebサイトを覗いてみたところ、こっそりと公開日が6/30に変更されていた。なお、私が担当していたときは4月第3週金曜日の公開が絶対防衛線であり、遅延などまず許されることではなかった。これは公開前に数社の顧客を獲得していたことによる責任が関わるために他ならないが、2017年版はこのようにして平然と納期を遅延させるということは、少なくとも6/16段階では顧客は一社も付いていないのだろう。ちなみに商品の内容そのものも相当に規模が縮小されており、商品としての基本的な信頼性を損なう水準にまで劣化している。そもそもが、コンシューマ向けの調査をベースとした商品であるにもかかわらず、中国で春節に実査を行っている段階で売る気がないと思われても仕方ないだろう(私が担当していた頃は時期バイアスの問題を避けるため、1/2~1月上旬に必ず実査を行っていた)。こんな素人級のチョンボを平然と行うような連中が顧客に対して知的優位性を以て対することなどそもそも無理ではないかと思う。そして全く顧客が付かない場合、また昔通りの数百万円の赤字を垂れ流すだけの商品になるのだから、人的資源の見込みがない段階でとっとと止めてしまうべきだったのだ。誰も責任を取る人間がおらず、戦術・戦略目標も曖昧なまま資本を逐次投入するだけで結局事態は何一つ改善しないどころか無限の泥沼に嵌まっていくというのは日本の組織が100年前から繰り返しており何一つ学んでいない欠陥のひとつだが、あのガチガチのドメスティック企業にはその悪弊が膏肓に入るレベルまで悪化しているということなのだろうと思う。