sadaijin_nanigashiの日記

虚無からの投壜通信

日々のあれやこれやをいろいろと。

2016年フランス旅行(7): 美術館を回る

【3日目】

7時半頃起床。昨日結構あちこちを歩き回ったせいか、足がそれなりに疲れているようだ。ということで、改修中では入れないなどで今まで行ったことがなかった美術館にでも行くかなということで、まずは16区のマルモッタン・モネ美術館に行くことにする。色々調べてみると、東駅から同美術館のあるRanelagh駅の少し先まで一本で行く路線があるので、それに乗ることにする。ええ、パリの地下鉄は治安の問題とかもあってあんまり好きじゃないんですよ……

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ところが渋滞がひどいことこの上ない。うーん、留学していた当時はこんなに渋滞激しかったっけ?と思いながらずっと車窓の景色を眺めていたのだが、確かに主要な大通りは片っ端から車が数珠つなぎである。以前どこかの新聞記事でパリの大気汚染は悲劇的なレベルになっていて、冬などは最悪だと北京と同レベルだと読んだことがあるのだが、それも頷けるように感じる。そもそもがパリは河岸段丘の底に形成されている都市なので、排気ガスなどの重い空気は底に溜まりやすく、出口としてはセーヌ川経由しかない。そのせいなのかパリの高級住宅地というのは比較的海抜が高いところに集中している傾向にある。サンジェルマン・アン・レーとかヴェルサイユとかその好例だろう。また、比較的所得の低い層が多い18区でもモンマルトルの丘の上の方はスゲー高級住宅地でもある。

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やー、16区はさすがに街並みが美しいですねー。

というわけでマルモッタン・モネ美術館のそばに着いた。想定では30分くらいで着くと思っていたのだが、実際には1時間弱掛かった。パリ市の公共交通網は実質的にダイヤが存在しないのでこれでもいいんだろうけどね……

マルモッタン・モネ美術館はモネの『印象、日の出』が所蔵されていることで有名な美術館だが、過去パリを訪れた時には改修工事やら色々の理由で訪れることが叶わなかった美術館である。他にも『睡蓮』のコレクションがオランジュリー並みに充実していることでも有名でもある。

この日は、企画展としてモネとムンクホドラー(Ferdinand Hodler, 1853-1918)の比較展をやっていた。途中から内面性に極端に傾斜したムンク、あくまで自然の描写と肖像画にこだわったホドラーとモネを比較することで、三者の表現の違いをテーマ別にまとめたもの。雪の中の曖昧模糊とした様子の描写については、モネはやっぱうまいなーと感じる一方で、ムンクの太陽の強烈な描写やホドラーの山紫水明の描写の精神性などにも興味を惹かれた。

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というわけで常設展示も含めて一通り見学し終えたあとバス停で時間を潰しつつ、どこ行こうかなーと地図をめくる。そういやロダン美術館は何だかんだで行ってなかったなと気づき、次はロダン美術館に行くことにする。

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実はロダンの作品は結構な数が上野の国立西洋美術館に収蔵されてて、弟子のアントワーヌ・ブールデルの傑作『弓を引くヘラクレス』もあわせてロダンの主要作品は国内で見ることができるし、『作家ユゴー』とか『バルザック記念像』はオルセー美術館で見ることができるんだが、この美術館はロダンが住んでいたところをそのまま利用しているということもあり、彼が買い集めていた他の芸術家の作品(ゴッホの『タンギー爺さん』とか)も見ることができる。パリのピカソ美術館みたいな感じだ。

そんなわけで、『地獄の門』とか主要な作品は「あれコレはガキの時に上野で見たぞ」みたいのが多かったのだが、一室はカミーユ・クローデルの作品の展示のために割り当てられており、その部屋では精神を病む前の彼女の作品を見ることができた。

カミーユ・クローデルの作品群は技術の極めて高い水準での完成、構成のダイナミックさなど、多くの点で圧倒的な才能を感じさせるものだった。もちろんロダンとの関係によって触発されたところ大だったのかもしれないが、そうでなくともいずれ彼女の才能は世間を屈服させる程度には開花しただろうと思う。だが、作品からも垣間見られるあまりに鋭すぎるその感性は、早晩彼女の精神を蝕んでしまうものではなかったかとすら思う。女性芸術家というものが文学の世界でようやく少しずつ市民権を獲得していただけに過ぎなかったこの時代、彼女が芸術以外で様々な問題や圧力を受けることになるであろうことは容易に想像できるからだ。

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ロダン美術館の庭園を散歩。といってもなにかイベントを行うらしく庭園の大半は閉鎖されていた。主要作品は移動されていて見ることは可能だったものの、散歩の楽しみが削がれてしまったのは残念だ。

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美術館を出たあとは、足が少し疲れたので近くのカフェにて一休み。アンヴァリッドがすぐ近くにあり、クーポラ部分がのぞいていた。レモン入りのペリエを注文し、30分ほどダラダラしながらメールなどをスマートフォンで確認。うーん、交通量が多いせいか、空気が汚いなあ……

とりあえず最寄りの駅に移動することも兼ねて、のんびり移動再開。