sadaijin_nanigashiの日記

虚無からの投壜通信

日々のあれやこれやをいろいろと。

数字の読み方も知らないバカは世論調査なんかやるな

【産経・FNN合同世論調査】中国の軍拡「脅威」78.9% 内閣支持率は微増 合同世論調査の主な質問と回答(1/4ページ) - 産経ニュース

惨頸の件の記事、Webでは別のページに調査と分析のスペックが書かれていて分かりづらいことこの上ない(これ自体が客観性から1億光年くらい遠ざかっているプロパガンダであることの証拠だ)という致命的ミスがあるのだが、この調査で用いているらしいRDD法は固定電話に架電するため、非都市部の高齢者の単身世帯へのリーチ率が高く出やすいという問題があることがよく知られている。そのため、通常の世論調査では回収サンプルを人口データに基づいてウェイトバック補正するのが一般的なのだが、当然ながらそれを行うと誤差が大きくなるという問題が生じる。だから誤差をできる限り小さくするためにもこの手の調査は大サンプル(サンプル数が2倍になると標準誤差は約1/1.41になる)でやることが基本中の基本なのだが、この調査はどうもN=1,000程度らしいし、ウェイトバックをかけたという記述もない。この段階で相当に世論調査と統計の基本を理解してない大チョンボなのだが、この記事に出てくるサンプルサイズでの95%信頼区間はウェイトバックを行わないとしてもだいたい±2.5%程度あるので、デモ参加者とされる3.4%を余裕で食いつぶしてしまう大きさになることが強く推定される。デモに行った人間が一人もいないわけではもちろんないので、この場合、世論調査のデザインと分析に大きな問題があることが余裕で判明する。
ここまで計算を行えば、普通に良識のある担当者ならば恥かくだけだからもうちょっと頑張って5000サンプル(そうすれば95%信頼区間は±1.1%くらいにはなる)くらい集めなきゃと思うはずなのだが、そんな余裕も知能も今の惨頸新聞の担当者にはないらしい。

さらには「デモに参加した」層の分析を行っているが、仮にN=1,000だとしたら参加者は34人である。これを非参加者と比較分析して各種検定にかけた場合、一応は有意差ありとの結果は出るかもしれないが、その%をそのまま額面通り受け取ることはとてもできないというのは、データを眺めてニヤニヤした経験のある人ならば常識というか基礎の基礎の基礎レベルの話であり、産経の記者は統計とか読んだことないのかという哀れさすら催さずにはいられない。

で、調査票から。

【問】中国は抗日戦争勝利70年記念行事の軍事パレードで、軍事力の増強ぶりを内外に示した。日本の安全保障にとって、中国は脅威だと思うか

おいおいおいおいおいおいおいおい、完全な誘導じゃねえかよ。こんな調査票を事業会社(not広告代理店)のマーケティングリサーチ部が書いたら、チェック担当に半殺しにされるぞい。以前の読売新聞の世論調査の誘導全開ぶりにも「メダマドコー」だったが、惨頸のそれは分析もボロボロという点で社としての知能水準について深い同情を誘うものとなってしまった。

なお、何でいまだに新聞とかテレビ局は内閣支持率とかの世論調査をRDD法でやってるかというと、時系列比較のためにやむを得ないという事情があるからです。この手の調査の代表性の問題はいろんなパネル会社がウェビナーで自社宣伝を兼ねた説明をしてるので、暇があれば参加してみるのもいいと思います。