sadaijin_nanigashiの日記

虚無からの投壜通信

日々のあれやこれやをいろいろと。

漢文の時間です。

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昔、楚の国に大人在り。名を安忠と謂う。祭りをせんとして楼を建てんと欲し、呉国坐覇(有名な建築家とされる)を招き、請うて起こす。

而して坐覇画くも、大楼絢荘にして安忠の財足りず建てること能わず。猶ほ安忠画を枉げて建てんと欲するも、邑の者皆否と為したり。安忠逡巡低晦し弐冬(二年の意)過ぎて漸く築楼を易む。邑人皆是を賢断と為す。

然し両勘曰く、「嘗て放蕩息子在り。狼藉乱暴を為しては皆是を宥むる事能わず。後尽く失ひて財鮮くなりて後悔ひて直くとなり、党人皆是を大いに誉む。而して份友曰く、『元由り心真成溌剌たる者、長じて名を為す、即ち最も良し。次善なる者、元心廉直にして長じるも、是を善しとする者寡し。放蕩息子凡人となるも、元は業い悪しきこと明らかなり。悪しき事先ず撓めるべし。過悪忘れ、平凡たる事悦ぶは愚なり』と。安忠楼、元より悪し。弐歳空費して得る物無し。皆惑ひて蒙き屡話重なる事限りなし。安忠と坐覇、楼案明るければ春に大楼を得ん。安忠の愚過大にして、此を嗤わざるは如何」と。鄙人是を聞きて安忠を皆呵呵し、此の空楼を混胡屡土(こんこるど)と綽名したり。

民明書房『坐覇と安忠に見る管理工学』)